ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

「梓の悪い癖」

「えっ?」

いきなり何言い出すんだろう。

「ひとりで考えて、ひとりで落ち込む」

無理して『何でもない』と言ったのが、バレてたのか……。
でも、この気持ちばかりはどうしようもない。

「まぁ、俺が悪いんだよな」

遼さんが悪い? どうして?
その言葉が理解できないでいると遼さんの長い手が伸びてきて、くしゃっと私の頭を撫でた。
たったそれだけのことで、顔がにやけそうになってしまうなんて……。
私も案外、勝手で簡単な女なのかも。

「そろそろ出ようか」

「うん」

遼さんの後をついて店を出ようとすると、突然彼がキョロキョロしだして立ち止まる。

え? 何?

訳が分からないまま立ち尽くしていると、大きな観葉植物でひと目から阻まれたところに連れ込まれ、いきなり振り向いた遼さんにチュッとキスされてしまった。

「元気出た?」

「は……はぁっ!?」

大きい声を出してしまって、遼さんに口を押えられてしまう。。

「声が大きいよ。いい、よく聞いて? 今もこれからも、梓は俺の大切な彼女だから。分かった?」

そんなに顔を近くに寄せて、甘く囁くなんて……。
それはどういう意味? と聞くことも出来ないまま、うんと頷いてしまう。

「じゃあ、本当に行こうか」

何事もなかったかのように、私の手をとって歩き出す遼さん。
勝手なのは、遼さんも一緒か。

---俺の大切な彼女---

甘い言葉に甘いキス。
私の心が潤うのには、十分過ぎる刺激だった。




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