ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「からかわないで……」
「からかってないよ。梓にこのウエディングドレス、着せたい」
多くの人が行き交う往来。
今時、人目をはばからず抱き合うカップルが珍しいわけじゃないけれど、慣れない私は恥ずかしさを隠し切れない。
それに、今そんな言葉を言わないでほしい。本気にしちゃうじゃない……。
このウエディングドレスを着て遼さんの隣に立つ、自分を想像してしまう。
いつか本当に、そんな日が来ればいいのに……。
「そ、そういうことは、本当の彼女に言わないと……」
何で、心にもないこと言っちゃうかなぁ。
「本当の彼女? う~ん……ねぇ梓、さっき言ったこと忘れた? キミは俺の大切な彼女でしょ?」
「だってそれは……」
契約期間だけでしょ? そう言おうとして止めた。
だって私は、私の心と身体は、もう契約期間だけでは終われそうもないんだから……。
遼さんはどう捉えたかは分からないけれど、昨晩“好き”と告白したわけだし。
---俺の大切な彼女---
その言葉は、遼さんの本心。そう勝手に思ってしまおう。
なら遼さんは__
---私の大切な彼氏?---
何だか、胸の奥にモヤモヤしていたものがサーッと消えて、つっかえていたものが取れた気分だ。
今は後ろから抱きしめられていて、遼さんの顔が見えないから都合がいい。
私の前で組まれている手に自分の手を重ねると、今の私の率直な気持ちを伝える。
「遼さん?」
「うん? 何?」
「その、いつか、ウ……」
「ウ?」
「ウエディングドレス、着させてくれる?」