ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
セブン・トラップ
知らされた真実 梓side
田舎風スープ、レーズンと人参のイタリアンサラダ、ジェノベーゼピザにスカンピのクリームソースパスタ。
どれもこれも、私の胃を十分満足させてくれる。
その量も然ることながら、味も文句の付けようのない美味しさだ。
特にスカンピのクリームソースパスタは、スカンピ(手長えび)の濃厚なコクと甘みが格別で、クリームソースとの組み合わせが絶妙だった。
今は食後のエスプレッソコーヒーを飲みながら、遼さんとの会話を楽しんでいる。
この店のオーナーとは、オーナーが遼さんの店に飲みに来るようになって仲良くなったこと。
そのおかげで遼さんの店のメニューにも良い影響を与えてくれ、レシピが増えていったこと。
嬉しそうに話す遼さんの顔を見ていたら、私まで嬉しくなってきてしまう。
幸せ……
こんな幸せな気持ちをもう一度感じることができるなんて、半月前の私には想像もできなかった。
一生ひとりで生きていく。お金しか信用しないなんて言っていた私が、遼さんと一緒にいたいと思うなんて……。
気づかないうちに遼さんを熱く見つめ言葉を失っていた私に、遼さんがテーブルの向こうから手を伸ばし、顔の前で振った。
「おーいっ、俺の話ちゃんと聞いてる?」
「えっ? あっ……」
「聞いてなかっただろ? 何考えてた? 俺のこと、じっと見つめて」
「それは……」
遼さんといることが“幸せ”なんて、恥ずかし過ぎてここでは言えない。
「こ、今晩、話します」
緊張して、やっぱり敬語。
「それは楽しみ」と遼さんが笑いながら言うと、もう一度手を伸ばし私の髪をクシャッと撫でた。