ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
雅哉くんのあの態度……。
遼さんとお兄さんとの間には、とてもシビアな問題があるみたいだ。
私なんかが首を突っ込むことじゃないのは分かってる。分かってるけど、やっぱりあの『約束の一ヶ月』と言う言葉が引っかかってしょうがない。
ここでひとり、うじうじ考えてても埒があかないか。
話してくれるかどうかは分からないけれど、ちゃんと遼さんに聞いてみよう。
一段ずつ踏みしめるように三階まで上がると、ゆっくりと部屋のドアを開けた。
「何コソコソやってるの? 普通に入って来ればいいだろ」
そこには、店の制服に着替え普段と変わらない様子の遼さんが立っていた。
店についた時までと明らかに違う態度に戸惑う。
でも今なら聞けるかもしれない。
そう思い話しだそうとしたら……。
「遼さん、あのね……」
「あっ梓、ごめん。もう下に行かないと……。それに今日は忙しいから遅くなるかもしれない。昨日も帰ってないし、今日は帰ったほうがいいよ」
送れなくて、ごめん__
そう言うと、私の頭を撫で、部屋から出て行った。
あれは絶対に、私の話しをはぐらかしたよね?
それに今日は土曜日。今更言わなくたって忙しいのは分かってるのに、遅くなるかもなんて取ってつけたような理由で私を帰そうとするなんて……。
可怪しい__
絶対何か隠してることがあるんだっ。
この時の私は、この後とてつもなく大きな真実と隠されていた遼さんの秘密を知ることになるとは、想像もしていなかった。