ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
まるで人形のようにムクッと起き上がると、テーブルの上に置いたコンビニ袋を漁る。
買ってきたもの全部テーブルの上に広げ蓋や口を開けると、片っ端から手をつける。
そして、ただ黙々と食べ続けた。
お腹が空いてるはずなのに、何の味もしない。
ただ食べているだけ。
そして、時折感じたしょっぱい塩味。
何度目かにそれを感じた時、自分が泣いていることに気づく。そして一度気づいてしまうと、もう涙は止まらなかった。
涙と鼻水でグズグズになりながらも、まだ食べ続ける……。
「遼……さんに、会い……たい……っ」
嗚咽に混じり、本音を漏らしてしまう。
遼さんのことを信じてあげれないダメな人間なのに、心と身体は遼さんを求めてしまう。
矛盾した気持ちが、私の頭を混乱させた。
やっぱり恋なんかしなければよかった……。
そう思った瞬間、息が苦しくなり呼吸が乱れ、訳の分からない言葉を叫ぶと、そのまま倒れ意識を失った。
遠くから声が聞こえる。
「梓……梓っ!!」
その声がだんだん近くに感じ、ゆっくり目を開けた。
「梓? 目が覚めた? 私が誰だか分かる?」
「え……り?」
「あぁ良かった。もしこのまま目が覚めなかったら、どうしようかと思った」
何? どうしたというの? まったく状況がつかめない。
見慣れた天井に、いつもの布団の感触……。
ここは私の家に間違いない。
そこに枝里がいて、半泣き状態で私を抱きしめている。