ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「何、ポカンとした顔してんのよっ。あんた、部屋で倒れてたんだからねっ!」
「あっ……」
「あって……。思い出した?」
なんか少しづつ思い出してきた。
お兄さんのことがあって、自暴自棄になってやけ食いして、何か急に苦しくなって……。
慌ててベッドから起き上がり、バッグの中を見る。
「あるよね……」
一瞬、全部が夢だったんじゃないかと思ったけれど、500万の小切手が夢じゃなく現実だったことを再認識させた。
「何よ、それ?」
枝里が怪訝な顔を見せた。
「遼さんのお兄さんに渡された手切れ金」
「いつ会ったのよ?」
「昨晩遼さんと話しようと思って店行く途中、待ち伏せされた。料亭連れていかれて、遼さんには婚約者がいるから金輪際会うなって……」
また涙が出てきそうだ。
「あんた、それ受け取ったわけっ?」
「もう大きな声出さないでよ。頭痛いんだから……」
「そんなこと知るかっ!! どうしてそんなもん受け取ってきたのっ?」
「受け取ったんじゃなくて、無理矢理受け取らされたのっ!!」
何で目覚めた早々、枝里に責めらないといけないのっ。
私だって、好きで持ってるわけじゃないのに……。