ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
話をしている途中また苦しくなったけれど、二人がいてくれたおかげで、すぐに落ち着きを取り戻す。
「梓、遼さんのことが好きで好きでしょうがないんだね。なのに自分の気持ちを押し込めちゃうから、苦しくなるんだよ」
「枝里の言う通りだね」
二人が顔を見合わせた。
「だって、おためしで付き合いだしたんだよ? でも本当の気持ちを伝え合った途端、騙されてたなんて。婚約者がいて、小野瀬に戻っちゃうなんて……」
どういていいか分からくなって、苦しくなるのはしょうがないじゃない。
そんな簡単に、自分の気持ちは割り切れないよ……。
膝を抱え、身体を小さく丸めた。
「梓はお兄さんが言ったこと、全部信じたの?」
枝里が悲しそうな声で聞いてくる。
正直、よく分からない。
信じたいのに信じられない……とでも言ったところだろうか。
お兄さんから聞いた話しは、どれもこれも衝撃的なことばかりで、今思い出しても頭がおかしくなってしまう。
「信じた訳じゃないけど、婚約者がいるってことは間違いないと思う。その件に関しては、何が何でも成功させて結婚させないといけないみたいだし……」
「それを阻止しようとして、遼さんがあんたを騙したって? そう思ってるわけだ」
「…………」
「真規子っ、帰るよっ!!」
「え? えっ? 枝里、どうしたの?」
「梓っ!! 一人でちょっと頭冷やしなっ。いつまでもそんなんだったら、私はあんたの親友やめるわっ!」
一人で捲し立てるように言い放つと、さっさと玄関から出て行ってしまった。
「梓ごめん。また来るから」
真規子も枝里の後を追って出て行った。