ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

今日は毎日の食材の仕入に、注文を付けておいた。
いつもは仲買人をしている仲の良い先輩に任せっぱなしだが、今日は祝い料理に使うための食材を1つ2つ増やしてもらった。
届いた食材を見て、「さすがは先輩っ」と呟く。
今晩は、この新鮮な魚介類を使って、彼女が喜ぶ料理を作らなければ。
……って、おいおいっ!
今日の主役は枝里ちゃんであって彼女じゃないぞっ!!
そう、心の中の俺がツッコんだ。思わず一人で笑ってしまう。
そうだよな。枝里ちゃんをもてなすほうが先だ。
旨い料理と旨いカクテル。
彼女から頼まれた祝いの席は、これがなくては始まらない。
腕を存分に振るうか。

腕まくりをし手を洗っていると、裏口から大きな声が聞こえた。

「おはようございますっ」

雅哉か。相変わらず元気だよな。
手を拭きながらキッチンスペースの入り口を振り返ると、制服に着替えた雅哉がエプロンをつけながら入ってきた。

「遼先輩、今日って梓さんたちが来る日だったすよね?」

「よく覚えてるな」

「だって俺、梓さんのこと好きっすもん」

こんな身近にライバル出現!
おいおい、マジかよ……。

「あっでも、俺には可愛い彼女がいますからねぇ~。梓さんはキレイなお姉さん。憧れっすよ」

そ、そうだよな。こいつには大切にしている彼女がいたんだよな。
こいつの何気ない言葉に、動揺するなんて……。
まったく、今日の俺はどうかしてる。
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