ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
マジかよ……。
これって俺が言わないといけない言葉だったんじゃないかっ!?
元はといえば、梓を自分のものにしたくて始めた“罠”をかけていった恋愛。
結果的にはOKだが、梓に告白させては情けないしカッコ悪い……。
気づけばかなりの時間考え込んでいたのか、梓の顔が心配そうに歪んでいた。
慌てて言葉を返す。
「彼女でいい? 俺は梓にウエディングドレスを着させてあげるって言ったんだけど?」
「それって……」
梓の身体が小さく震え、目には涙まで溜まってきている。
俺の気持ちは伝わったみたいだ。
でも、これで終わりじゃない。
「何? 感動しちゃった? ちゃんとした言葉は今晩言ってあげるから、泣くのはその時にしたら? ランチ食べに行くのに、その顔はどうかと思うよ」
ちょっとからかい気味に上から目線でそう言えば、不服そうに頬を膨らませる梓。
そんな顔もたまらなく可愛い。
結局、梓がどんな顔をしようと、可愛くて愛おしくてしょうがないんだ。
笑った顔も怒った顔も泣いた顔も、どれひとつだって見逃したくない。
今晩俺の気持ちを梓に伝えこの腕に抱き、全部を俺のものにしたい……。
俺の言うことを聞き、涙をハンカチで押さえる梓。それが終わると彼女の手を取り歩き出す。
梓がしがみついて重くなっている腕が、幸せな気持ちを身体中に運ぶ。
それだけで気分は軽くなり、自然と足取りも軽くなる。
梓が何故だか笑い出す。とびっきりの笑顔だ。
笑顔も涙を溜めた顔もいいと言うと、恥ずかしがってまた顔を赤くする梓。
「今晩、もう一度あの顔を見せて」
耳元で囁くと、その言葉の意味が分かったのか、腕から伝わる梓の鼓動が速くなっていった。