ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
その後も、子犬のようにキャンキャン食い下がる雅哉を何とか宥め準備に取り掛かると、悠希たちが出勤してきた。
まだ納得がいってない雅哉は悠希たちを見つけると、さっと近寄る。
「俺、今日先輩のヘルプに入りたくないから、誰か変わってっ!」
「おい雅哉、そういうのをガキって言うんだよ。仕事とプライベートは分けろっ!!」
「ガキで結構。仕事はちゃんとするよ。でも先輩の近くはゴメンだね」
俺と雅哉の間に挟まれ、困っている悠希の肩をたたく。
「悪い悠希。あいつの気が治まるまで、俺のヘルプに入って」
「わ、分かりました」
「蒼太と智成も悪いな」
いいっすよぉ~と明るく返事をして着替えに行くあいつらに、心が救われた気分だった。
その日は思っていた以上に忙しく、梓のことを考える暇もなく仕事に集中した。
閉店時間を2時間超えて仕事を終えると、クタクタになりながら三階に上がりそのままベッドに潜り込んだ。
身体が寒さでブルっと震え、目が覚めた。
時計を見ると、もう11時を回っていて飛び起きる。
すぐにシャワーを浴び眠気を飛ばし、バスタオルで頭を拭きながらコーヒーを淹れる準備をした。
ふとテーブルに置いてある携帯に目がいく。
着信などを知らせるランプは点滅していない。と言うことは───
梓から何の音沙汰が無いということか……。
当たり前だよな。普通に考えれば、俺から連絡を入れるべきだ。
でも何だかんだと言い訳をつけて、その連絡を先延ばしにしている自分がいた。