ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

今日は予約も入っていて、12時を過ぎると雅哉だけでなく悠希、智成、蒼太も早く勤務についていた。

「おはよう」

全員に声をかける。若い連中は「おはようございますっ」と威勢のいい返事を返すのに、雅哉だけは相変わらずの無視を決め込んでいた。

「雅哉、いい加減にしろよ」

「梓さんと仲直りした?」

「いや、まだだ……って、喧嘩したわけじゃないんだけどな」

「ふ~ん……」

ふ~んって何だよっ!
でもやっぱり、俺から連絡するべきだよな。
ポケットから携帯を取り出すと、雅哉に一言声を掛けて外に出た。

何を話すべきか……。
まずは兄貴とのこと、そして小野瀬のこと。
梓は、俺の過去をほとんど知らないだろう。そのことを話した上で、今回のいきさつを話そう。
携帯のボタンを押す手が震える。カッコ悪いな、俺。
それでも何とか押し終えると、梓を呼ぶコール音が鳴り始めた。
一回、二回、三回と増えていく。

───頼む、出てくれっ───

しかしその願いも虚しく、梓が出ることはなかった。
まだ寝てるか、それとも出かけていて気付かないとか……。
勝手に、都合がいい方に考えてしまう。
夜、店が終わってから梓の家に行くか。でも12時を過ぎてしまう真夜中に、彼女の家に行くのも気が引ける。

また後で掛けるか……。

携帯をポケットにしまうと、気持ちを入れ替え店へと戻った。


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