ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
開店の時間も近づくと、バイトの連中も出勤してきて、店の中が慌ただしくなってきた。諸々の準備も、順調に進んでいる。
この店は、男五人で切り盛りしている。俺と唯一の社員・雅哉。こいつは幼馴染で、5歳離れてるからか弟みたいなもんだった。あとはバイトの、悠希、智成、蒼太。大学生と専門学校の学生だが、みんなよく働いてくれて、頼りになる仲間たちだ。
「マスター。そろそろ開店時間ですね。僕、外のウエルカムボード……」
「いや、今日は俺がやるからいいぞ」
蒼太の申し出を手で制止し、入り口へと向かった。
彼女が予約した時間にはまだ早いが、何となく気が急いてしまう。
もう一度店内をぐるっと見渡しチェックをすると、古い洋館の扉を開けた。
「おっ!!!」
「わぁっ!!!」
おいおい、誰だよっ。開店前から誰かが立ってるなんて思わないから、年甲斐もなく声を出して驚いてしまった。
「マスター。ごめんっ。早すぎだったよね……」
「なんだ、枝里ちゃんか。いや、いいよ。どうぞ、中に入って」
枝里ちゃんを中に入るよう促し、少しだけ速まっていた鼓動を抑える。ウエルカムボードをオープンにすると、彼女が来るはずの方向をチラッと見てから、自分も店内に戻った。