ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
エイト・トラップ
動きだす感情 梓side
今週いっぱいもらった休みも特に何もすることなく、ただボーっと過ごしていた。
真規子は新しいお店の開店準備で忙しいのに、昼と夜と必ず寄ってくれている。
私の好きなパンやお菓子、食材を山のように買い込んできてくれるのだけど……。
「別に私、大食いじゃないし」
「でも今は、いっぱい食べて体力つけないとっ!」
でも真規子の気持ちは嬉しかった。
日に日に元気は取り戻しつつあるけれど、ふと遼さんのことが頭の隅を掠めると、途端に心臓をぎゅっと掴まれたかのように胸が痛くなってしまった。
それも真規子がいてくれると、すぐに落ち着きを取り戻すことができた。
二日目には、「あんたの親友やめるわっ!!」と暴言を吐いて部屋から出て行った枝里も、ちょっとバツの悪そうな顔をしながら来てくれた。
「許した訳じゃないんだからね……」
そう照れくさそうに言う枝里の顔を見て、笑いが込み上げてくる。
「ははっ、分かってるって」
「はい、これ」
差し出した手には、いま話題になってる有名洋菓子店のロールケーキの箱が握られていた。
「わぁ、嬉しい。紅茶でも淹れるね」
「お構いなく」
いつになくしおらしい枝里に、またも笑みが溢れてしまった。