ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
お気に入りのストロベリーティーを淹れると、部屋中に甘い香りが広がった。
枝里の前にカップを置くと、淹れたての紅茶を注ぐ。
生クリームがたっぷり巻かれたロールケーキとそれは、相性がバッチリだ。
二人共しばらく黙って、黙々と食べ続けた。
枝里がカチャリと音を立ててフォークを皿に置くと、ふぅと小さく息を吐いた。
「梓。そろそろ気持ちは変わってきた?」
「な、何の?」
今更ごまかしたってしょうがないのに、つい悪あがきをしてしまう。
まだ枝里の質問に答えるだけの、気持ちがまとまっていなかった。
「じゃあ質問を変える。梓は今でも遼さんのことが好き?」
「当たり前じゃない……」
声は小さくなってしまったが、その気持ちは嘘じゃない。
だからこそ、どうしていいか分からなくなってしまっているのだから……。
「でも遼さんの、本当の気持ちが分からないから……」
「ねぇ、毎日のように一緒にいて、本当に遼さんの気持ち分からない? 梓って、そんなに鈍感だった?」
遼さんの気持ち───
私が遼さんにヤキモチを妬いて店を飛び出した時、必死になって追ってきて部屋に連れ戻された時の痛いくらいの思い。
おためしの恋愛を破棄してほしいと言った時、破棄を破棄すると重ねた唇の熱さ。
私がつい口を滑らせて「好きです……」と言ってしまった時の、嬉しそうな顔。
翌日のデートの時、ウエディングドレスに目を奪われていた私を、人目も憚らず後ろから抱きしめ甘く囁いた声。