ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
それから、どのくらいの時間が経ったのだろう……。
呆然と立ち尽くしている俺に気づいた枝里ちゃんが、声を掛けてきた。
「マスター!! ちょっと、どうしちゃったの?」
「えっ? あぁ……。あははははっ。ごめん。何でもない」
いい年して、笑ってごまかしてしまった。情けない……。
その場に居難くなり、何か飲み物を作ろうと向きを変えようとした。しかし、その腕をグッと掴まれてしまう。
「ねぇ、マスター? もしかして梓のこと、好き……だったりする?」
「な、何を急に言い出すんだよ」
スゴい洞察力。枝里ちゃん、侮れない……。
これはどうも、ごまかしきれそうもないな。
照れ隠しで、頭をポリポリと掻いた。
「やっぱり、そうなんだ。でもね、さっき話した通り、梓を落とすのは難しいと思うなぁ~」
そう言うと、またスマホを手にする。それを操作しながら話しを続けた。
「私としては、梓にもう一度恋をさせてあげたいんだよね。ずっと一人なんて、寂しいと思わない?」
言葉を発せず、頷いて見せる。
「でしょ! マスター。梓のこと好きなら、あの子を幸せにしてあげて」
「幸せに……」
「そう。頑なな梓の心を解かしてあげて。私も協力するから」
少しおどけた表情を見せ、ウインクする。
彼女の四年前の話を聞いたときは、正直、これは一筋縄ではいかないな……と思ったりもしたが、これはある意味グッドタイミングなのかもしれない。
-----“甘く蕩ける罠”-----
早速この後、仕掛けることにしよう。