ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
守るべきもの 遼side
その週の金曜。仕事が終わると早々に悠希たちを上がらせ雅哉を捕まえると、三階へと向かった。
「雅哉、コーヒーでいいか?」
「そんなことより何か話しがあるんだろ?」
二人きりになると、いきなり口調が変わるな。一応俺のほうが歳上なんだぞ。
幼い頃の、従順で可愛いお前はどこ行ったんだよ?
コーヒーを淹れながら昔を懐かしんでいると雅哉が椅子に座り、テーブルに頬杖をついた。
「梓さんから連絡あった?」
「ない」
「連絡した?」
「してない」
呆れたような大きな溜め息が聞こえ、椅子がガタガタと鳴り雅哉が立ち上がった。
「何してんだよっ、遼兄っ!!」
「まぁそう怒るな。ほら、コーヒー」
コーヒーカップを置いてから雅哉を宥め座らせ、自分も椅子に座る。
「しばらく会わないで欲しいと言われた」
「誰に?」
「枝里ちゃんともう一人の友達に」
「会いに行ったんだ」
本来ならば仕事へ行っていない時間だったわけだから、会いに行ったと言っていいものかどうか……。
そこで偶然居合わした枝里ちゃんたちに、梓が意識を失い倒れていたことを聞いた。