ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「俺が不甲斐ないばっかりに梓を苦しめてたんだ。どうしてかは分からないけど、意識を失って倒れていたらしい」
「梓さん、大丈夫なの?」
「あぁ。あれから枝里ちゃんが何度かメールくれて、徐々に元気になってるって……」
会いたい。今すぐにでも行って、梓を抱きしめたい。
毎日そんな思いにかられて、胸が酷く痛んだ。
「それで遼兄はそうするつもり?」
「それなんだが……」
ここ数日、いろいろと考えた。どうすれば梓を迎えに行けるかと。
俺自身を取り巻く、小野瀬の問題を解決させることが先決か……。兄貴や親父とも決着をつけなきゃいけないな。
きっと枝里ちゃんは、そのことをちゃんとしてから会いに来いと言いたかったんだろう。
今のままでは俺は、梓を騙しているに過ぎないから……。
明日実家に帰ること、話し合いに決着が見えるまで戻らないことを雅哉に伝える。
「店は明日、明後日と休もうと思う。悪いが、悠希たちに連絡しておいてくれないか?」
「分かった。でも店は休みにしない。俺とあいつらで開けるよ。それでいいよね?」
「けどな……」
「大丈夫、心配ないって。それより、絶対に勝利決めて戻ってきてよ」
そう言って雅哉が手を差し出すと、俺たちは熱い握手を交わした。