ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「はははっ。枝里ちゃん、もう許してあげたら?」
「そう? マスターがそう言うなら……」
なんて、最初から怒ってないくせに。結構策略家だな、枝里ちゃんは。敵にはしないほうが良さそうだ。
彼女が枝里ちゃんの隣に座ると、先に始めてるよと手にしていたカクテルグラスを軽く上げた。
幾つかの料理は、もうすでにカウンターにセッティングしてある。
それを見て、彼女が嬉しそうに笑う。
何度も言うようだが、俺は彼女の笑顔がたまらなく好きだ。身体中から嬉しさが込み上げてきた。
ニヤけそうな顔を見られまいと場所を移動しようとした時、枝里ちゃんと目が合う。ニヤッと笑うと少しわざとらしく、
「梓が来るのあんまりにも遅いから、マスターに話、付き合ってもらっちゃったよ」
と言い放った。
おいおい、枝里ちゃんっ!! もう始めろって言うのかっ!?
まだどうやって“罠”をかけていくか、はっきりと決まっていない状態だった
が、背に腹は代えられない。この機会を逃すのも、得策ではないだろう。
俺にも謝りの言葉を入れる彼女の肩に手を置くと、体の中のスタートボタンがオンになる。