ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「まだ完璧じゃないけど、充電できたか。さすがは梓パワーだ」
梓と合わせた唇から伝わってきた梓の思い。それが俺に力を与えてくれる。
目の前で梓は恥ずかしそうにしているけど、梓、君だってそうじゃない?
お互いがお互いを求めて愛を育み、その度に二人の絆が強くなっていく。
その為だったら、俺はどんなことがあったって梓を守ってみせる。絶対に手放したりはしない。
そのことを兄貴に伝えると、隣で梓がちょっと笑いながら自分の頬を抓っていた。そして一言……
「痛いよね」
当たり前だ。全く、そんな可愛いことばかりしてると、またその口塞ぐぞ。
可笑しくなって笑い出すと、梓の肩を抱いた。
嬉しそうに俺を見上げる梓。
「遼、お前は何も分かってない。まぁ精々頑張るんだな」
残念ながら、兄貴とは分かり合えないみたいだ。
これで終われるとは思っていないが、今日のところは帰ろうと扉に向かうと、ドアノブに手を掛ける前にその扉が開いた。
そこには髪が真っ白になってしまっていた親父と、百合さんが立っていた。
百合さんに促されもう一度部屋に戻ると、今度は親父と対峙することとなった。
親父から目が離せない。
ここで先に目を離してしまったら、親父と対等に戦うのが難しくなってしまう。
昔と変わらぬ威厳と風格に怯みそうになりながらも何とか自分を保っていると、親父が咳払いをし重い口を開いた。