ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「全然構わないよ。面白い話も聞かせてもらったし」
彼女がキョトンとした顔をする。
そうだよな。枝里ちゃんがどんな話をしたのか、まだ気づいてないみたいだし。
じゃあここはもう少し……。
「梓ちゃんに、どうして彼氏がいないのか? ってね」
笑みと一緒にそう耳元で囁けば、彼女の顔が見る見る間に紅潮していく。そして何かを悟ったのか、突然大声を上げた。
「枝里っ!! あの話したのっ!?」
余程話されたくなかったのか、しばらくは枝里ちゃんに文句を言い続ける彼女。
その姿を、カウンターの中から見つめる。
「もう彼氏なんてこりごり。男なんて所詮みんな同じでしょ」
そう自分で言い出すと、気持ちも少し治まってきたのか、落ち着きを見せ始めた。
しかし、なんだな……。
彼女の口から直接、『男なんて所詮みんな同じ』という言葉を聞くと、少しだけ胸が痛くなる。昔の俺を思い出せば、言い返す言葉もない。
それに『お金さえあれば、ひとりでも生きていける』って、まだ26の女が言う言葉じゃないだろう。
心配から彼女にいろいろ言う枝里ちゃんも、やはり納得していないのか、小さく肩を落とした。