ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「遼さん……」
少し涙目で名前を呼べば、すっと身体を抱き寄せてくれた。
「ごめんね、待たせて。荷物積み終わったし、そろそろ行こうか?」
柔らかく微笑む顔に、私も顔が緩んでしまう。
「遼がそんな穏やかな顔をするようになるなんて……。梓さん、ありがとう」
お母さんが私の手を握りしめ、グッと力を込めた。
「お、お母さん……」
少し戸惑いながらもそう呼ぶと、お母さんの顔がパッと華やいだ。
「まぁまぁ、百合さんの時も嬉しかったけれど、もう一人娘が出来て嬉しいわ。息子なんて、大きくなっちゃうとつまらないんだもの」
遼さんが申し訳なさそうに頭を掻く。
「お母様。ほらっ、いつでも直接連絡取れるように、メールアドレス教えて頂いたらどうかしら?」
そう言うと、百合さんがスマートフォンを取り出した。
直接連絡って……。
今後のことを思うとちょっと怖い気もするけれど、断る理由はない。
私もバッグからスマホを取り出すと、百合さんとアドレスを交換し合った。
「これでいつでも梓さんと連絡取れましてよ、お母様」
「そうね。また楽しみが一つ増えたわ。まずは何から始めようかしら……」
この様子だと、すぐに呼び出しを受けそうだ。
でもそれも、いいかもしれない。
私がお母さんたちと仲良くすることが、きっと遼さんとお兄さん、そしてお父さんと仲をいい方向に導くことになると思うから。