ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
泣いて泣いて泣き尽くすと、すーっと身体が楽になる。
そして本来の自分を取り戻すと、自分の今してることが無性に恥ずかしくなってきた。
顔が上げられない。
遼さんの胸に顔を擦り付けるように泣いていたから、きっと化粧は取れてるだろう。
鼻水だって、ダダ漏れだ。
目は何だか熱いし、腫れぼったくなってるんだろうなぁ……。
それに、今気づいたんだけど、遼さんの上着ってこれ白だよね?
この顔が当たってるところ、きっとスゴいことになってるんじゃないっ!?
っど、どうしよう……。
遼さんの身体にしがみつきしばらくじっとしていると、まるで赤ん坊を寝かすときのように、背中をポンポンと撫でられた。
「もう大丈夫? 泣き終わった?」
コクンと一回頷くと、恐る恐る顔を上げた。
そして、遼さんの胸元を見て絶句する。
そこにはまるで亡霊のような、私のメイク顔がくっきりと残ってしまっていた。
「遼さん、ごめんなさい。これ、弁償しますっ!!」
両手でその部分を隠しあたふたしていると、その身体が震えだす。
何? と思って顔を上げると、遼さんが肩を震わせて笑っていた。
「あ~、服ベショベショだなぁ~。それに、梓の顔……超おもしろいっ!」
おもしろいって……。
この状況を作ったのは遼さんなのに、それってヒドくないっ!?
メイク顔を隠していた手を離し、そのまま胸ぐらを掴むと、遼さんを引き寄せた。
「誰のせいで、こんな面白い顔になったと思ってるのっ!! 責任とってもらいますからねっ?」
「了解っ!!」
へっ? 了解って何が?
私がキョトンとした顔をしていると、遼さんがポケットから携帯を取り出した。