ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

その丁寧な立ち振舞からは、彼女が上品な良い家庭で育ってきたのを窺わせる。そっかぁ、マーくんって呼んでるんだ。
でもいったい、雅哉くんとどこで接点があったんだろう……。
彼女な顔を見ながら不思議に思っていると、遼さんに脇腹を肘で突かれた。

「ほら梓、麻衣ちゃんに挨拶だろ。何ボーっと突っ立ってるの?」

呆れ声でそう言われて、ハッと我に返る。

「そうだった、ごめんね。私は春原梓と言います。こちらこそ、雅哉くんにはお世話になりっぱなしで……。いい年して、すみません」

「そんな……。マーくんにとって遼さんがお兄さんなら、梓さんはお姉さんなんだって、いつも話してくれるんですよ。どんな方なのかお会いしたかったので、今日はお招きいただけてとても光栄です」

「おい麻衣。恥ずかしくなるような話、あんまりするなよな」

照れながら彼女の身体を優しく小突く姿は、いつものちょっと小悪魔的な態度をとる雅哉くんからは想像できないものだった。
雅哉くんも恋する男の子だったのねと、ちょっと嬉しくなってしまう。

「こんなところで立ち話もなんだし、みんな中入れよ」

遼さんの提案で、今日のランチは男二人が作ってくれることになった。
私も手伝うと申し出たがすぐに却下され、麻衣さんと店の掃除をしながら待つことにした。





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