ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

「昨晩、マーくんったらソワソワしちゃって大変だったんです」

いきなりニコニコした顔でそう言われ、椅子を運んでいた手が止まってしまう。

「何かあったの?」

「うふふ。梓さんのことが心配だぁって、ずっと家の中をウロウロしてたんですよ」

「私のこと……」

嫌だ、それってもしかして……。

言ってる意味が分かるとボッと一瞬で顔が赤くなってしまい、顔を上げていられなくなってしまった。
雅哉くん、勘弁してよ。いくら遼さんと気持ちが繋がって夜を一緒に過ごすことになってと言ったって私も初めてじゃないんだし、そのことを彼女に話さなくてもいいと思うんだけど……。
椅子に座り込み大きく溜め息をつくと、彼女も目の前に腰を掛けた。

「あの……私も梓さんって呼んでもいいですか? 家では勝手に、梓さんって呼ばせてもらってたんですけどね」

そう言って舌をぺろっと出す仕草は、さっきまでのしっかりした態度とは違って、あどけない顔をしている。
その顔に気持ちが落ち着いてきた。

「うん、梓で構わないよ。私も麻衣ちゃんって呼ばせてもらっていい?」

「もちろんですっ。私、生意気な弟しかいないので、梓さんみたいなお姉さんが欲しかったんですっ」

無邪気な顔で微笑む麻衣ちゃんを見ていたら、私が考えていたことなんてどうでもよくなってしまった。
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