ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
それを麻衣ちゃんが向きを変え、雅哉くんを前に出す。
「マーくん、はしゃぎ過ぎるのもいい加減にしないと、私本気で怒りますよ?」
麻衣ちゃんのその言葉で、雅哉くんの顔つきが変わった。
私と遼さんも、何が起こったのかと目を合わせて驚きを隠せない。
こんなおっとりとしたお嬢様気質の彼女の、どこにそんなパワーがあるのかと思うくらいの威圧感だ。
口調はおしとやかなのにね……。
さすがにこれはマズイと思ったのか、雅哉くんがしおらしく頭を下げた。
「遼兄、梓さん、ごめん。悪気はないというか、遼兄と梓さんが元通りに鳴ってくれて嬉しくてつい……」
「雅哉くん、顔を上げて。私も遼さんも怒ってないから。ねぇ?」
遼さんに顔を向ければ「まあな……」と、思わず吹き出して笑い出した。
「ねぇ雅哉くん。私はね、いつもあなたに助けれてたんだって、心から感謝してるの。今回ことだってそう。雅哉くんが私の背中を押してくれて勇気をくれたから、ひとりで遼さんに会いに行けた」
「俺は何も、大したことしてないし……」
「そう思ってるのは雅哉くんだけ。私にはその優しさが、どれだけ心強かったか……」
そこまで話すと、この数週間にあったいろいろなことが頭の中を駆け巡り、胸を熱くした想いが涙となって溢れ出た。
「梓……」
遼さんが、そっと肩を抱いてくれる。
そして私の心を落ち着かせるように、ポンポンと撫で始めた。