ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
しばらく私が用意しておいたアンティパストと一緒にカクテルを味わっていると、いきなり遼さんが笑い出した。
驚いて顔を見ると、私の頭をぐしゃぐしゃと撫で始める。
「クリスマスプレゼントがカクテルだけ? って思ってたでしょ?」
「えっ!? そ、そんなこと思ってない……」
全く、どうしていつもこういう肝心な時に動揺
しちゃうかなぁ。
これじゃあ、『そうです』って認めてるみたいなもんだ。
「ほんと、梓は可愛いね。思ってることがダダ漏れなんだから」
「ダダ漏れ……」
得意顔の遼さんは、あまりの言われように呆然としている私を見てニコリと微笑むと、ズボンのポケットへと手を突っ込んだ。
そして、その手をゴソっと動かし何かを掴むと、今度は至って真面目な顔を私に向けた。
あまり見たことのないその顔に、ただならぬものを感じ姿勢を正す。
お互い向かい合う形になると、遼さんが徐ろにポケットから手を引きぬいた。
何かを握ったままの手を私の目の前まで持ってくると、その手を開く。
「こっちが本当の、クリスマスプレゼント」
甘い囁きとともに開かれた手からは、グレーのジュエリーケースが出てきた。その表面には、私でも知っている高級ジュエリーで有名なブランド名が書いてある。
「私に?」
「当たり前だろ。開けてみて」
遼さんが私の肩を抱き肩口に顔を寄せると、ドキドキと馳せる気持ちを抑えながら、ゆっくりとその箱を開けた。