ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「今日は二箇所行くところあるから、車で移動ね」
歩いて店の近くまで行くと、遼さんが裏のほうを指さす。
「ちょっと荷物取ってくるから、先に駐車場に行って待ってて」
そう言うと、可愛いクマのマスコットが付いた車のキーを私に手渡たし、通用口
から中へと消えていった。
手にしたキーを目の前にぶら下げてみる。
「なんか、遼さんっぽくないかも」
ピンク色のクマに、クスっと笑ってしまう。
でも、ピンクのクマなんて、遼さんが自分で買うはずない。とすれば、誰かから
のプレゼント。
前の彼女……とか?
頭の中に浮かんだその言葉に、チクンっと胸が痛む。
な、何で胸が痛むかなぁ。遼さんほどの人だもの。彼女の一人や二人いたって、
何の不思議もない。それこそ、いない方が不自然だ。
訳の分からない気持ちを抑えるようかのように車のキーを強く握り締めると、言
われたとおり、駐車場に向かった。
そこには、白いスポーツワゴンが一台停めてあった。キョロキョロと周りを見渡
して、これ一台しかないことを確認する。
「これ……だよね」
笑顔がさわやかな遼さんらしい、スタイリッシュな車だ。
うんうんと頷きながら近寄り中を覗いていると、背後から声がした。
「何そんなジロジロ覗いてるの? 探ってるとか?」
「探るって、何を?」
「別の女の気配とか?」
一瞬、握り締めているピンクのクマが頭の中をよぎり、動揺してしまう。
「そ、そんなこと探ってないっ。仮に女性の気配がしても、私には関係なく
て……」
だんだんと声が小さくなってしまう。