ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「はじめまして。春原梓です」
その挨拶に、修さんのつぶらな瞳が弧を描く。
何となく歓迎されてる?
暖かすぎるその微笑みに照れくさくなり、遼さんを窺い見る。
「この人は学生時代の先輩で、矢田修さん。俺、この人には頭が上がらないんだよね」
そう苦笑してみせると、修さんも一緒に笑い出す。「何言ってんだっ」と背中を叩かれても嬉しそうにしている遼さんを見て、二人の仲の良さが伝わってきた。
繋がれている手も、ホンワリ温かい。
しかし、その温もりに鼓動の速さを感じ始めるとすぐ、するっと手を離しソファーに座ってしまった。
さっきまでは『仕事なのに手なんか繋いで……』と思っていたのに、ただ温もりが無くなっただけで寂しい気持ちが込み上げてきてしまう。
寂しい?
自分で自分に問いかける。私も案外、勝手なもんだ。
小さくふっと笑みをこぼすと、落ち着かない気持ちのまま遼さんの隣に腰掛けた。
そんな私の様子に何かを感じたのか、遼さんが「どうした?」と、いきなり顔を覗きこむ。
「うわぁっ!!」
突然の顔の近さに、大声を上げてしまった。そのまま仰け反り、遼さんから少し距離をとる。
息……止まるかと思った。
大きく深呼吸して、バクバクしている心臓を落ち着かせる。その場凌ぎとわかっていても、何度かそれを繰り返し、なんとか元の位置へと座り直した。