ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
そのまま何事もなかったように座っていると、遼さんがまた私の心を揺さぶる一言を言ってのけた。
「梓、やっぱり可愛い」
そう言うと、クスクスと笑い出す。
いやいやいや、ここどこかと思ってるのっ!?
目の前には、修さんがいるっていうのに……。
恥ずかしさから顔を真っ赤にして俯きながら、遼さんを睨む。
絶対、意地悪でやってるよね? 笑い方が妙だし。
はぁ……。時と場所を考えてやって欲しいよ、まったく……。
「遼。お前と知り合ってから随分変わったけど、そういうところは全然変わってないのな」
「先輩……。変な言い方しないでくださいよっ」
遼さんが少しムキになって言うと、修さんが面白そうに笑った。
そんな二人の姿を、ただ漠然と眺める。
遼さんの昔か……。少し気になる。
随分変わったって、今に遼さんからは想像できないくらい?
もう少し突っ込んで聞いてみたい気分に駆られたけれど、今の私にはそんな勇気はなかった。
「それにしても、お前が彼女連れてくるなんてな。何? 今回はおやじさん、大丈夫なのか?」
「修さんっ!!」
言われてはマズい言葉でもあったのか、遼さんが急に大きな声を張り上げた。
何で? おじいさんの話の時と比べて、明らかに様子がおかしい。その顔からは、少し興奮しているのが見て取れる。
私には聞かせたくなかったとか?
確か、おやじさんがどうとか……。
どうしたっていうんだろう。こんな遼さん、初めて見た。