ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「じゃあ、そういう事にしておいてあげる」
ちょっと偉そうにそう言うと、頭をチョンっと小突かれた。そんな些細な仕草に、胸がきゅんっとしてしまう。
今度は私の顔が赤くなってしまう番だった。
「へぇ~、梓も暑いんだ」
隠すように横を向いたけれど、一歩遅かった……。
私の顔を覗きこむと、意地悪な笑みを浮かべる。
またいつもの遼さんに戻ってるじゃない……。
助けを求めるかのように修さんに目を向ければ、何とも嬉しそうに微笑んでいた。
「梓ちゃん。こんなヤツだけど、よろしく頼むな」
頼むと言われても。なんて答えればいいものか迷ってしまい、遼さんの顔をチラッと見ると……。
なんか、私がどんな返事をするのか、期待した目で見られてるような気がするんだけど……。
いいの? 本心で答えるよ? そう視覚に訴えてみる。
もちろん返事はない。でも、何となく心が通じあったような気がして頷き、修さんときちんと向き合った。
「はいっ。私なりに頑張ってみますっ!!」
一ヶ月限定、おためしの恋愛。
だけど、もしかしたら、私にも万が一の望みがあるかもしれない、
…………遼さんとの未来…………
その望みに懸けてみるのも悪くない。そんな気持ちを込めて返事をした。
「まぁ、仲良くやってくれ」
「大丈夫ですよ、先輩」
遼さんが何をもって“大丈夫”と言っているのか定かではないけれど、今の私にはその言葉だけで十分だった。