ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

その後、最初の予定通り、打ち合わせを始めた二人。
来月には、一年の中でもっとも盛り上がり賑わうイベント“クリスマス”が迫ってきていた。
遼さんのお店『secret garden』でも、毎年ちょっとしたイベントを開催していて、この時期に合わせたカクテルを提供している。それに合うスナックや料理も毎年用意していて、いつも修さんと一緒に考えていたらしい。
遼さんが持ってきていた鞄から、ノートを取り出す。

「今年は、こんな感じにしようと思ってるんだけど」

「うん……。なかなかいいじゃないか。でもちょっと魚メインって感じだなぁ。来月頭に、いい生ハムやソーセージが手に入るんだ。それも加えておくよ」

「いいですね。じゃあ、それ似合うカナッペのレシピでも考えておきます。試作品出来上がったら連絡するんで、たまには飲みに来てくださいよ」

「おお、分かった。久しぶりに“ゴッドファーザー”でも奢ってもらうかな」

コッポラ監督の名作映画『ゴッドファーザー』の第一作目が公開された時に作られたカクテル。オン・ザ・ロックに使われる、オールドファッションド・グラスで作られた“重厚な男のためのカクテル”は、修さんの人柄、スタイルに似合っている。

「来週にでも飲みに行く」そう確約をとると、遼さんは気分良さそうにテーブルの上を片付け始めた。私も手伝おうと手を伸ばすと、手と手が触れる。

「あっ……ごめん」

「何で謝るかなぁ。今日は朝から何度も手、繋いでるのに」

荷持を全部しまい終えるとそう言い、ごく自然に私の手をとり立ち上がると、速くなっていく私の鼓動を感じているのか小さく笑った。


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