ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
この何ヶ月間、俺がしてきたことは消せない……
許しを請えば、許されることだとも思っていない……
でも俺は、本来の自分……いや、新しい自分になって、もう一度、俺がこの世に生まれてきた意味を見つけたかった。
『お前の住んでる洋館の一階。少し改装すれば、いい店が出来ると思うんだけどな』
あの一階は、昔じいさんが趣味で喫茶店をやっていて、今もそのままの状態で残していた。
修さんに紹介してもらいバーで働き始め、いつかは自分の店が持ちたいと思うようになっていたし、いつまで迷っていてもしょうがないと修さんの提案を受け入れた。
改装は修さんに任せ、そのころ興味を持ったカクテルの勉強を始めた。
元々学ぶことが好きだった俺は、店主がバーテンダーで酒類に関する深い知識を持っていたのも幸いして、仕事をしながら高い知識を身につけていくことができた。
何もかもが初めてづくしで戸惑う俺を、修さんは親身にフォローしてくれ、何とか半年後オープンに漕ぎつけた。
それが……
-----secret garden-----
何から何まで協力してくれた修さんには、どれだけ感謝してもしきれない。
これで、新しい俺として生きていく道筋が見えたような気がする。
オープン初日、店を閉めた後、修さんと二人“ジン・トニック”を飲む。修さんが厳選してくれたライムを絞ると、ひと味ちがう爽やかな味が広がった。
『どうしてあの時、俺に声を掛けてくれたんですか?』
これは前から、どうしても聞きたかったこと。
『どうしてだろうな……俺にもよく分かんないんだ。ただ、あんな荒んだ生活をしてても、遼、お前の目は死んでなかった。俺はお前のその目に、懸けてみたくなったのかもしれない』
そう照れくさそうに言う修さんをみて、目に熱いものが込み上げてきた。
そして俺は、深く頭を下げた。
あれから、もうすぐ七年……。