ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
初めて修さんの所に女性を連れて行く。
昔の俺を知っている彼は、どんな顔をするだろう……。
梓には打ち合わせがあると話した。
もちろん嘘ではない。仕事の話があるのは本当だけれど、それが一番の目的かと聞かれれば、違う。
修さんに、梓を紹介すること。
梓にその事も伝えたら、「おためしの彼女を紹介したって意味ないよ」と言われた。
「意味は……ある」
繋いでいた彼女の手を、強く握りしめた。
不思議そうな、それでいて困ったような顔を見せる梓。
当たり前だ。俺が本気なのを彼女は知らないんだから。
それから彼女はしばらく何も話さなかった。俺が話しかけても上の空で返事がない。
どうやら考え事をしていたらしく、何も聞いていなかったようだ。
考え事? それって……まさか。
そう思うと、口が勝手に動き出した。
「それって俺のこととか?」
戸惑う彼女の口から、驚くような言葉が出る。
「そう。遼さんのこと考えてた」
嘘だろ……。
今度は、俺が動揺してしまう。
「め、珍しく素直だね」
結局最後まで、俺のどんなことを考えていたか教えてはくれなかったけれど、梓の心が動き出していることが嬉しかった。
これで修さんに、堂々と“彼女”と紹介できそうだ。