ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

何とも居たたまれない空気に、修さんが機転を利かせた。

「遼っ。お前、いい女見つけたな。俺も肩の荷が下りた気分だ」

そう言って、その場の雰囲気を元に戻すと同時に、俺は彼に認めてもらえたことを知る。それが嬉しくて、泣きそうになるのをこらえ応えた。

「修さんっ!  その、女って言うの止めてくださいよ」

少し大袈裟かもしれないが、また新しい人生がここからスタートした、そんな気分にさえなってしまう。
隣を見てみれば、梓が恥ずかしそうに俯いていた。

「いい女だって」

そうからかうと「バ、バカっ!!!」と怒りながらも、照れたように微笑む梓を愛おしく思った。
そんな俺達を見て何かを思い立ったのか、修さんが立ち上がる。隣の部屋に消えて行くと、何かをさがしているらしくガサゴソと音がすごい。
そしてその音が消えてしばらくすると、俺だけが呼ばれた。
何があったって言うんだ。呼ばれることの見当がつかず、不安な気持ちを隠せないまま、梓に「待ってて」と一言だけ残し、隣の部屋に向かった。

恐る恐る中に入ると、ニヤニヤと奇妙な笑い湛えて立っている修さんがいた。ゆっくりとそばに近づくと、梓には聞かれてマズいことなのか、小声で話しだす。

「お前、よく今まで我慢したな」

「何をですか?」

何のことか見当がつかず聞き返すと、ニヤニヤした微笑みを濃くした。

「これだよっ!」

右手を上げると、その人差し指と中指に挟まれた避妊具が見えた。
修さんが言わんとしたことの意味を、瞬時に理解する。
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