ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
それから30分ほど車を走らせると、一軒の日本家屋の前で車を停めた。
ラーメン屋さんに到着したのかと辺りを見回すけれど、それらしき店が見当たらない。
「遼さん、ここどこ?」
「ラーメン食べるんだから、ラーメン屋の前でしょ」
苦笑しながらそう言うと、車から降りてしまう。腑に落ちないまま私も車から降りようとすると、遼さんがドアを開けてくれた。最近し慣れてない行動に、どうやって降りたらいいか分からなくなってしまう。
「何してるの? 早く降りないとラーメン食べれないけど?」
そんなこと言われなくても分かってるっ!!
でもそこで手を差し出して待たれていると、恥ずかしいやら嬉しいやら、変な顔になってしまって上手く顔を上げられない。
「ほんと梓って可愛いいよね」
「何回も可愛い可愛いって言わないでって言ってるのに……」
そんな私の抗議なんて一切耳に入らないのか、「可愛い可愛い」を繰り返しながら、いとも簡単に手を繋いでしまう。
「梓の手は、ずっと繋いでいたいくらい柔らかで気持ちがいい」
「それって、ただ太ってるっていうことでしょ」
「どうしてそうやって比喩するかなぁ。梓、全然太ってないでしょ。まぁ今後太ったとしても、俺は全然構わないけどね」
女の子はいつだって、自分の体型には自身がないものなのっ!!
って、もう女の子っていう年齢でもないか……。
もうっ! こんな会話の後じゃ、ラーメンが食べにくくなるじゃないっ!!