ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

そして数十分後……。

「ごちそうさまでしたっ」

豚骨魚介系のさっぱり中華そばを、難なく食べ終えた。
それも、焼き飯と二人前の餃子も一緒に……。

「惚れ惚れする食いっぷりだなぁ」

「…………」

これだけ食べておいて体型に自身がないなんて、そんなこと考えていた自分が恥ずかしい……。
でも、ここのラーメンが美味しすぎるのがいけない。もう少しお腹に余裕があれば、もう一杯違う味を賞味したいくらいだ。

「それにしても、目の前の日本家屋がラーメン屋さんなんて驚きだよ」

「俺、この落ち着いた感じが気に入ってるんだよな」

遼さんがそう言うのも納得だ。外観が日本家屋なら、ジャズが流れる店内もシックで大人っぽい感じ。
これで味が文句なしに美味しいときたら、人気が出てもよさそうなのに……。
遼さんにこっそり聞いてみたら、「店主が宣伝が嫌いなんだって」と教えてくれた。

「私もお気に入りになりそう」

「また一緒に来ような」

また一緒に……。
契約の一ヶ月が過ぎても、その言葉は有効?
そんな事は聞けるはずもなく、俯きながら「うん」と小さく頷いた。
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