ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「俺、梓ちゃん気に入ったわ。遼にはもったいないな」
「誠さんっ、冗談もほどほどにしてくれよ」
そう言って頭を掻く遼さんを見て、胸がキュンとする。
だって、必死になってるって言うことは、少なからず私のことを離したくないと思ってくれてるってことでしょ?
まさかそれまでもが演技だとか?
また悪い方に考えてしまい、自己嫌悪に陥ってしまう。
「梓。さっきまでのキラキラした元気はどうした? また何か良からぬことを考えてるか?」
遼さんは私の顔を読むのが上手い。すぐに何を考えているのかバレてしまう。
「考えてない、考えてないっ!! ほらっ、元気だよ」
遼さんが呆れたように微笑むと席を立ち、今日の恒例、サッと手を差し出した。私も何の違和感もなく、その手に自分の手を重ねる。
「誠さん、頼んであったカクテルグラス見せてもらっていいかなぁ」
「おぉ、そうだったな。裏の作業場に来てくれ」
誠さんも席を立つと作業用のエプロンを掛け、奥の扉から裏へと向かった。
「楽しみだね。遼さんもまだ見てないんでしょ?」
「まだ見てない。自分のデザインしたものがどんな風に仕上がってるのか……。わくわくするよ」
繋がれてる手に力が入る。それに合わせて、私も少しだけ力を込めた。お互いの心までもが繋がったような気がして、胸が高鳴る。
遼さんもドキドキが速くなってるような……。
それは私と同じ気持ちから? それともカクテルグラスへの期待?
出来れば先攻であって欲しいと願い、遼さんの顔を見た。
温かい笑顔を向けてくれる遼さんに、きっと同じ気持ちなんだと勝手に決めつけ、幸せの気持ちのまま遼さんと手を繋いで作業場に向かった。