ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「一人ではこさせない。また一緒に来るよ」
「はははっ!! まぁ頑張れやっ」
誠さんに肩をバシバシ叩かれて、困ったような顔をする遼さん。
お店だとマスターで経営者だから気づかなかったけど、結構ないじられキャラなのね。
今度からは私もいじってみようと笑ったら、痛いほど手を握られてしまった。
「痛いっ!! 遼さん、手っ!!」
「何で笑ってたの?」
「そ、それは……」
私もいじられキャラでした……遼さん専用の……。
カクテルグラスやその他もろもろを車のトランクに詰め込むと、車に先に乗ってるようにと言われた。誠さんに挨拶をしてから、素直に言われたとおりにする。
助手席に座って外の様子を伺うと、何やら真剣な顔をして話す二人の姿が見えた。
遼さんのお父さんのことでも話しているんだろうか……。遼さんが時々こっちを見ては、また話し込む。私にも関係ある話なんだろうか。
そんなことされたら、すっごく気になるんですけど……。
二人から目を離すと、バッグの中のスマホが鳴り出した。
「雅哉くん?」
先日アドレスを交換したばかりの柏原雅哉からの着信だ。
「はい、梓ですけど……。雅哉くん? どうしたの?」
「梓さん、ごめんね。遼先輩、いる?」
「い、いるけど。何で一緒だって知ってるの?」
「だって付き合ってるんでしょ?」
「えっと、それは……」
「隠したってバレバレだよっ! 何時に帰ってくるの?」
「今◯◯市だから、4時には帰れると思うけど」
「了解っ!! 開店準備はちゃんとやっておくから、いそがなくていいよって先輩に言っといて」
「あ、ありがとう」
そう言って電話を切ると、遼さんが窓を叩いた。