ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「また枝里に弱みでも握られてるの? 梓も成長しないねぇ~」
苦笑しながらそう言う真規子に、キッと睨みをきかす。
「そう言う真規子も、いつまで経ってもフラフラしてて。何でこっちにいるのよっ!! 仕事はどうしたの?」
「うん? 辞めた」
「辞めたって……。何で?」
「こっちで、カフェと雑貨を扱う店をオープンさせるため」
「はぁ!?」
真規子は広島では名の知れている、飲食店を何軒も展開している企業に就職した。そこで創業者の竹中慎太郎に気に入られ、彼と一緒に世界中を飛び回っていた。
若くして成功した彼とゆくゆくは結婚し、二人で夢を追い続けると思っていたのに……。
「彼と……別れたの?」
「ううん、別れてない。梓みたいに捨てられたとでも思った?」
「!?☆!※%!?」
また四年前の悪夢が蘇り、言葉にならない言葉を発してしまう。
どうしてこの二人は、私の古傷を土足で踏むようなことをするのだろう。
親友で何でも言い合える仲というのは、時には酷だ。
一人ブスッと不貞腐れていると、オーナーがスープとサラダを運んできてくれた。
「枝里さんに梓さん、いらっしゃい。それに今日は真規子さんも一緒なんて、嬉しいなぁ」
「そっかぁ、オーナーは真規子のファンだったもんね」
「ただのファンじゃないよ。大ファンだっ!!」
オーナーの言葉に、場が一気に盛り上がる。
不貞腐れていたのも忘れ美味しい食事に舌鼓を打っていると、枝里が徐に話しだした。