精神科に入院してきました。
疲れていた。

初めて心療内科にいったのは大学生の時。
徳島だった。

母が、夏休みに実家に戻っていた私がほとんど寝ていないことに気付き、徳島までやってきて、
「不眠症だから、睡眠外来にいこう」
って言った。



私はそんな必要感じなかった。

不眠症じゃない、勉強が忙しいから寝てないだけ。
国立大学の薬学部ってのは、「大学生」のイメージを覆すほど忙しい。



だけどまあ、母が熱心にいうので、とりあえず行った。
気軽なクリニックだった。



そこで薬を出されて、一週間嘔吐し続けるという副作用に苦しんだ。
……すでにうつ病ってことになっていた。



そのうち、勉強がはかどらない、テスト期間なのに困る、と訴えたら、「リタリン」って薬をもらった。




知ってる人は知ってるよね。
今は規制されてるお薬。
いわゆる合法の覚せい剤。




ま、リタリンは便利だった。
ウソみたいに体が軽くなって、ウソみたいに勉強がはかどった。



でも。


……
…………

「神崎さーん、お薬です」
いきなりドアを開けられ、私は目覚めた。



ええっと。
そうだ病院だ、私きのう、自殺に失敗した。


看護師がお水の入ったコップと薬の入った袋をくれた。
寝起きにいきなり薬。
セロクエル一錠
ワイパックス一錠


部屋には時計がない。というかなにもない。


だけど、気を利かせた看護師さんが、ティッシュの箱を置いてくれていた。
あまりに口の中が気持ち悪くて、ティッシュで歯をふき取った。


洗面台は立派だし、いわゆる精神病院の保護室とはちがってトイレもむき出しとかじゃないし、普通にホテルのトイレみたいな、むしろ温水便座でバリアフリーだからなんかリッチな感じだけど。


なにもない。
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