精神科に入院してきました。
びっくりして、あまりの不意打ちに寝た振りもできず、見回りの看護師に部屋の扉をあけられた。

 昼間怒鳴っていたあの男性だった。

怖い。
とっさに身をすくめたけれど、意外なことに彼は朗らかな声を出した。
「どないしたん?寝れんの?」



あまりのキャラの違いに驚いたけれど、私は
「はい」
と答えた。
彼は部屋の壁にもたれかかって、少し笑った。
「そうやろうなあ。こんなとこ普通慣れへんやろなあ。ケータイもないしよぉ」


「そうなんですよね」
私が答えると、彼は
「ま、ぼちぼちやってな」
と言った後、真顔で聞いた。

「ところで、神崎さんって地元の人?」
「はい、H高校出身ですよ」
「まじかー、なんか標準語ぽいから地元っぽくないわ。あ、睡眠薬追加いる?」


はい、とうなずくと、彼はにこっとして
「ちょっと待っててよ」
と出て行った。



 標準語ぽくて。
地元ぽくない。


そう、小学生のときから言われていた。
そしてそれは、私が「世間」になじめないと感じていた理由の一つかもしれない。



かっぷくのいい男性ナースはお薬をくれ、
「おやすみぃ」
と去って行った。

 昼間のあの恐ろしい様子はなんだったのか。
布団の中で考えた。


きっと、田舎過ぎて、この病院では統合失調症への正しい対応ができていないに違いない。

かれも看護師を目指して、職としているくらいだから、きっと本当はいい人なんだろう……

ただ、ちょっと知識が足りないだけ……



いつの間にか、眠っていた。

その日は9月14日。





2012.11.15 19:23
はなの
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