精神科に入院してきました。
無神経な女性ナースが、紙袋を持って帰ってきた。

N看護師が、私を見て困った顔をしながら、
「ほら、もってきてもらったものチェックしよ」
と、ナースステーションの机に広げた。

 ノート、筆記用具、「邪馬台国はどこですか」っていう本と、「ジンギスカンの秘密」っていう本。


N看護師は
「……渋い趣味やな」
と呟いて、私は父らしい暇つぶしセレクトに泣きながら笑った。


 全部許可が出ていて、でもN看護師は
「音楽きくもん入ってないなぁ。いらんの?」
と気遣ってくれた。
 本当は欲しかったのだけれど、大阪に置きっぱなしだから実家にはない。

私はうなずいて
「大丈夫です」
と答えた。




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分かったこともある。
此処は確かに、外、実家とつながっている。
家に会ったものが少しだけこの病室にやってきた。
 でも嫌だ。
此処に物はたくさんいらない。家にあればいい。
 私は帰るんだから。此処に物はたくさんはいらない。

 ウォークマンが大阪にあるあたり、私の自殺企図の無計画さを物語っている。



ああ、駄目だ、いろんなものがいろんなものにつながる。
 ノートの表紙の仔犬は実家の犬を思い出すし、家の物が来たらお父さんに会いたくてたまらないし、大阪という文字を書くだけでIさんが恋しい。




もういやだ。
でたい。
死なないからここから出して!!!!!!




 夕食は、食べられなかった。



その日、9月16日。



2012・11・17 7:18
はなの
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