精神科に入院してきました。
つまり、おもむろに、山男ははいていたズボンを脱いだのだ!
ここ数日、認知症の方々のいろいろな行動を見慣れてはいたけれど、さすがにびっくりする。しかも山男はまだそこまで年じゃないし。
私とA本さんが唖然としていると、彼はトランクス一丁になって、なぜか丁寧に、ひどくきれいに脱いだズボンをたたみ、それを公衆電話の横において、去って行った。
「……」
「……」
私たちはテレビを見るのも忘れて、置いていかれたズボンを見ていた。
そのあとおもむろに、A本さんが、
「なんでズボン脱いだんですかね?」
というので
「知りませんよぉ」
と私も返した。
……そりゃあ、まあ。
ここが「外」だったら。
わいせつ?露出?なにかで捕まるだろうけど。
あいにくここは天下無敵の閉鎖病棟。
むしろ山男は、「いつでもどこでもズボンを脱いでしまう癖」のせいで、病院に閉じ込められているのかもしれないし。
私たちは深く考えるのをやめた。
A本さんに至っては、
「僕、寝ますわ」
といって私にテレビのリモコンを渡してくれ、私たちのいる病棟の一番奥の部屋に引っ込んでいった。
……一人の時にパンツ男(山男、改名(笑)パンツ男と命名)来たら嫌だなあと思っていたら、パンツ男はどうやら看護師に見つかったらしい、男性ナースの声が響いてきた。
「○○さん、ズボンどこにやったん?そんな恰好でうろうろしてたらあかんやら!」
かくして、パンツ男は男性ナースに怒られながらホールにやってきて、ズボンを装着し、男性ナースに連れられて病室に戻された。
……なんだったんだ?一体?
うら若き乙女へのフォローはなしかよ?
……ま、いいけど。
もうなんでもいいや、ここはなんでもあり、私に害がなければそれでいい。
山男だって、下着まで脱いだら嫌だけど、もうズボンくらいいいよ。
そのために精神病院にいるんでしょ。
やがてA本さんが戻ってきて、
「時間経つの遅いですわ……あれ、ズボンなくなってる?」
と言ったので、私は先ほどの一件を話した。
A本さんもまともに見える。
こんな狭いところにいたら、私やA本さんは逆におかしくなりそうだ。
そのあとも、何度か山男は部屋から出てきて、ナースステーションのまえでズボンの着脱を繰り返していた。
……なんの病気なんだろう?
あいかわらず叫んでいるのは、縛られているおばあちゃんだろう。
娘さんの名前を呼んでいる。
たまに見かける中学生くらいの少年は、挨拶をしても反応がなくて、なにかコミュニケーション力に問題があるのだろうと思った。
おじいちゃんおばあちゃんたちはどうみても認知症。
本人の安全のためにここに閉じ込められている。
幻覚が見える人や、山男は何でここにいる?
社会の安全のため?
そして、私とA本さんは、お互い「事情で」ここにいる、きっと。
私たち、まとめてひっくるめて、老若男女みんなみんな、精神病患者。
その日、9月17日。
2012.11.19 12:06
はなの
ここ数日、認知症の方々のいろいろな行動を見慣れてはいたけれど、さすがにびっくりする。しかも山男はまだそこまで年じゃないし。
私とA本さんが唖然としていると、彼はトランクス一丁になって、なぜか丁寧に、ひどくきれいに脱いだズボンをたたみ、それを公衆電話の横において、去って行った。
「……」
「……」
私たちはテレビを見るのも忘れて、置いていかれたズボンを見ていた。
そのあとおもむろに、A本さんが、
「なんでズボン脱いだんですかね?」
というので
「知りませんよぉ」
と私も返した。
……そりゃあ、まあ。
ここが「外」だったら。
わいせつ?露出?なにかで捕まるだろうけど。
あいにくここは天下無敵の閉鎖病棟。
むしろ山男は、「いつでもどこでもズボンを脱いでしまう癖」のせいで、病院に閉じ込められているのかもしれないし。
私たちは深く考えるのをやめた。
A本さんに至っては、
「僕、寝ますわ」
といって私にテレビのリモコンを渡してくれ、私たちのいる病棟の一番奥の部屋に引っ込んでいった。
……一人の時にパンツ男(山男、改名(笑)パンツ男と命名)来たら嫌だなあと思っていたら、パンツ男はどうやら看護師に見つかったらしい、男性ナースの声が響いてきた。
「○○さん、ズボンどこにやったん?そんな恰好でうろうろしてたらあかんやら!」
かくして、パンツ男は男性ナースに怒られながらホールにやってきて、ズボンを装着し、男性ナースに連れられて病室に戻された。
……なんだったんだ?一体?
うら若き乙女へのフォローはなしかよ?
……ま、いいけど。
もうなんでもいいや、ここはなんでもあり、私に害がなければそれでいい。
山男だって、下着まで脱いだら嫌だけど、もうズボンくらいいいよ。
そのために精神病院にいるんでしょ。
やがてA本さんが戻ってきて、
「時間経つの遅いですわ……あれ、ズボンなくなってる?」
と言ったので、私は先ほどの一件を話した。
A本さんもまともに見える。
こんな狭いところにいたら、私やA本さんは逆におかしくなりそうだ。
そのあとも、何度か山男は部屋から出てきて、ナースステーションのまえでズボンの着脱を繰り返していた。
……なんの病気なんだろう?
あいかわらず叫んでいるのは、縛られているおばあちゃんだろう。
娘さんの名前を呼んでいる。
たまに見かける中学生くらいの少年は、挨拶をしても反応がなくて、なにかコミュニケーション力に問題があるのだろうと思った。
おじいちゃんおばあちゃんたちはどうみても認知症。
本人の安全のためにここに閉じ込められている。
幻覚が見える人や、山男は何でここにいる?
社会の安全のため?
そして、私とA本さんは、お互い「事情で」ここにいる、きっと。
私たち、まとめてひっくるめて、老若男女みんなみんな、精神病患者。
その日、9月17日。
2012.11.19 12:06
はなの