精神科に入院してきました。
9月18日は妙に早く目覚めた。
入院ももう7日目。


 外が暗いので、部屋の扉を開けてホールの時計を確認したら、まだ4時台で、仕方なしに明るくなるまで待った。
 6時半には部屋の電気をつけてもいいことになっている。


今日は火曜日、Mドクターが病院にいる日だ。

 なんとか、自分が「マトモ」だって、証明してここから出してもらわなくては。
私は退院する気で張り切っていた。



7時にホールに行くと、A本さんがすでに座っていた。
「おはようございます」
「おはようございます……眠れました?」

お互い、眠れなかったことを報告しあって、老人の会話みたいになってしまった。

 しばらくすると、いつもの車いすの中年女性……こちらはN辻さんという、がお部屋から車いすで連れてこられた。
 彼女はよく眠れたらしい、うらやましい限りだ。
というか、きっと睡眠薬が強いのだろう。



 A本さんと、少しずつ親しくなってきた。
彼が私を、
「神崎さん軽症やで、すぐにここからでられますわ」
なんていうから、私は自分の首の痣を見せて、首つりしたことを教えてあげた。
 彼は特に動揺するでもなく、自分はこの病院の「本館」と呼ばれる建物に入院していて、そこで暴れてしまったために今いる「北館」に連れてこられたと教えてくれた。


 私はこの病院について詳しくなかったので、彼の話はありがたかった。
いわく、この北館は「急性期病棟」のなかでも一番制限の厳しい場所らしく、本館にも「急性期病棟」と「開放病棟」があるけれど、まったく雰囲気が違うらしい。

 A本さんは、本館の閉鎖病棟こと急性期病棟で、ひどく不愉快なことがあって、やかんを投げてちゃぶ台返しをして、部屋の備品を壊して、とめに来た主治医を殴ったと話した。

 その話し方も本当におとなしい男性そのものだから、なんだか信じられなかったけれど、きっとそう、そうやって自分の不満を我慢しすぎてしまう人が「キレる」んだろう、なんて思った。


 さらに驚いたことには、A本さんはこちらの北館に連れてこられた時には拘束をうけていたという。あの、ナースステーションの奥にある、電気のついていない暗い部屋で縛り付けられて、とんでもなく苦痛だった、と語っていた。


 私はこのとき、単純に前後不覚になるくらいに暴れていて「危険」だたから拘束されたのだろう、なんて思っていたのだが、後々聞くと、暴れたその日は普通に寝かされ、起きてから、冷静に意識のある状態でこちらに連れてこられて、手枷足枷をつけられたらしい。


 それって、とんでもない恐怖で、懲罰だ。


私はやはり、この病院を信じられない。



 2012.11.19 19:17
はなの
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