精神科に入院してきました。
その日はテレビでAKBのじゃんけん選抜をやっていた。


 お年寄りたちが部屋に戻って(Sおじいちゃんは名前を名乗ってにこにこと私にお休みを言ってくれた)、N辻さんも、I沢おばあちゃまも戻って。

 例によってお水の飲み過ぎで苦しいA本氏は、9時の睡眠薬を早めにもらって部屋に引き取っていた。


 お年寄り、三人。中年一人。
これだけでもかなり違う。仲良くなれた、それだけでうれしい。


 私はいつになく明るい気分でテレビを見ていた。
と、あのコミュニケーションに問題のある少年がやってきて、珍しくテレビを見始める。

 まゆゆ、ともちんに敗退。
 こじはるもまさかの敗退。


へえ、と暇なので見ていたら、少年は割と熱心に見ていた。


 そうだよね、私たち、この北館で一番若い二人組。


 途中であきて、私は部屋に戻った。

認知症のお年寄りも、じっくりしゃべればまだまだガッツがあって、そのやる気を引き出して上げられれば、きっとまた元気になれるはず。

あまりにも入院が長くて、されるがままになっているらしいN辻さんなんかは、病院が患者をどんどん駄目にしていく典型例にみえた。


 そして、私。


明日は面会。
そう、箱入りで育ってきた娘が、首吊ったのだもの。
明日すぐにでも、親が面会に来てくれるものだと、私はわくわくしていた。


 本当にうれしくて。
その日は眠れなかったくらいにうれしかった。





 翌日、事態は激変する。
解放感と、失望と。


 そうここから、私の本当の戦いが始まった。



その日、9月18日。


2012・11・21 1:04
はなの
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