幸せの定義
私と彼
一目惚れだった。
そんな始まりにしたかったけれど、
私の人生にそんな甘い物語は登場しない。
高校受験を受けずに中学を卒業し、その後すぐに
コンビニでアルバイトで働きだしたが、
自動車免許が取れる年齢になった私は
約二年半働いたコンビニを辞め、日焼けサロンで働きだした。
それから私の運命は変わって行ったのだと思う。
その日、中学時代の友人をカフェで待っていた。
コーヒーとパンの香りでいっぱいのこのカフェは
普段常に動いていたい私が唯一いつまでも座って居られる場所なのだ。
友人は私に話しを聞かせたい時はいつもここを選ぶ。
話しと言っても毎度彼氏や職場の人間の愚痴ばかりなのだけれど。
シューシューという蒸気の音。
カチャカチャとカップが触れる音。
真剣な様子でテキストを開いている学生。
険しい顔で競馬新聞を食い入る様に読んでいる中年男性。
休憩中と思われる若い会社員の女性。
せわしなく動くスタッフ。
ホットモカの濃いチョコレートとコーヒーの香り、
カフェいっぱいの空気を楽しんでいると
下品な笑い声が聞こえてきた。