君がくれたモノ
俺は微かに笑った。


笑うしか‥なかった。


心を捨てたはずなのに‥
操り人形になったはずなのに‥

なぜか目に涙が。


今まで神様なんて存在を否定し続けてきたが、この時初めて神に祈った。


【自由にしてください】と。



携帯電話の向こうの蒼は、泣いているような気がした。
莉奈は目に涙を浮かべながら、どう蒼に声をかければいいのかも分からない。


「それから俺は、無意識に壁にかけられた剣を取り‥義父と義母を刺し殺した‥」

2人が倒れたのを見て、初めて声をあげて泣いた。


わずか10歳の子供が2人の大人を切った事はすぐに町中に広まった。
だが、殺した事よりも剣の腕を注目され、罪に問われるどころか11歳で町一番の剣術士として人を護るという仕事を与えてもらえる事になった。


莉奈は蒼の話を聞いて涙が止まらない。
外がすっかり明るくなっている。

「もう‥朝になっちゃったな。ゴメンな、変な話しちゃって」

過去の話をしている時とは違い、優しい声の蒼に戻っていた。

「ううん‥話してくれてありがとう。」
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