君がくれたモノ
時計をみると、もう学校に行く時間だと気付く。
そう思った瞬間、莉奈の部屋の前で声がした。

「莉奈!起きてるの?夕食も食べないで‥お父さんはもう出かけたわよ!」

お母さんだ。
莉奈の両親は去年離婚した。
昔から母の男性関係が原因で喧嘩が絶えず、去年とうとう離婚が決まったのだ。
莉奈は父が大好きだった。いつもどんな相談にも乗ってくる優しい父。
母には話せない事も、父には全て話せた。
離婚が決まった時も、莉奈は当然父親側に引き取られるのだと思っていたが、子供は母親が育てるのがいいという理不尽な理由で母に引き取られた。
それからすぐに母は知らない男を【お父さん】だと莉奈に会わせた。
そこから事はとんとん拍子に進み、母は再婚し今に至る。

新しい父は莉奈と早く仲良くなりたいのか、やたらと話しかけてくる。

いい人なのかもしれない。

でも莉奈は未だ【お父さん】と呼べずにいる。
莉奈の中で、お父さんと呼べる人はたった一人なのだから。

「起きてるよ!」

莉奈は無愛想に言い放ち、母が階段を下りる音を確認した。

「ゴメン蒼‥アタシ学校行かなきゃ。お母さん‥うるさいから」

学校というものがあるというのを教えたのも莉奈だ。
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