君がくれたモノ
「じゃあ‥帰り方が分かるまで、一緒にいよう。」

蒼は諦めたように笑顔で莉奈にそう言った。

「ここで、毎日莉奈と話しをしていたんだよ」

蒼は川を見つめながら話した。


「ここに来て、莉奈と話しをするようになってからは本当に楽しかったんだ。
ずっと莉奈に‥会ってみたいと思ってたよ」

蒼はいつも真っすぐに気持ちを伝えてくれる。
そんな蒼が、莉奈は少し羨ましかった。

「アタシも‥蒼に会いたかったよ」

あの時‥
桜の一言で教室を飛び出した時、莉奈が一番に思ったのは蒼だった。
莉奈の中で蒼は大きな存在になっていた。


蒼は莉奈の手を取り、立ち上がった。

「町を、案内するよ!」

蒼は莉奈の手を引き歩き出した。
石段を上り周りを見渡して、さらに莉奈は驚いた。

夢かな‥?

そう思わざる得ない光景が広がっている。
周りの建物から何から、まるで社会の教科書だ。
歩いている人の服装も、莉奈とは全く違っている。
男は袴、女は着物、といっても少しそれとは違うようだが‥

蒼も、袴のような姿だった。
町の人間と違うところと言えば、腰に剣のようなものが刺さっている事だ。
莉奈が以前教科書で見た刀とは違い、鞘が色鮮やかで洋風な感じがする。

「‥ねぇ。それって‥」
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