君がくれたモノ
「これは町の人を護るための物だよ」

そう教えてくれた。

町を歩くと夢の中にいるようだった。
ビルなど一つもなく、全てが木造で出来ていて、露店のような物が並んでいる。

莉奈は‘タイムスリップ’という言葉が頭に浮かんだ。

「莉奈の住んでいるところはこんな感じ?」

全てを不思議そうにキョロキョロ見ている莉奈に、蒼は聞いた。

「全っっ然違う!!」

違いを伝えたかったが、何をどう伝えればいいのか分からない。
全ての物が新鮮に見える。

ふと、莉奈は周りの人達にチラチラと見られている事に気付いた。

「‥アタシ、みんなと格好違うから変だよね。」

学校からそのままの格好の莉奈は制服だ。
いつも桜と色々な雑誌を見て、制服でも最先端の着こなしをしていた莉奈も、ここではその最先端のファッションが通用しない。

「アハハ、そんな事ないよ。その着物もかわいいよ!」

‥着物って。

莉奈は少し笑ってしまった。蒼に【制服】なんて言葉が通じないのはすでに分かっているのだ。

まぁ‥いいか!

蒼の笑顔は何もかもをそんな気にさせてくれ、温かい気持ちになれる。


ドンッ‥


「痛っ‥」

周りに気を取られていた莉奈は、前から歩いて来た男にぶつかり転んでしまった。

若い男と莉奈はお互いに転び、男も痛そうにしていた。
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